──最近、変な夢をよく見る。それはとても不思議な夢で哲学めいた内容になっている。登場する人物が私ともう一人いるのだが、顔は目が覚めるとぼやけてしまって思い出せない。しかし、夢の中でその人物と語り合った内容だけはしっかりと覚えている。 五月蠅い目覚ましの音を止める。…今日もいつもと同じ、不思議な夢を見た。やはりその人物の顔はぼやけてしまって、男か女かも、それが人間なのかすらわからない。 ─平安時代の人は、夢の世界は現実と違う別の世界として確かに存在していると思っていたという。夢に、恋い焦がれている人が出てきたとき平安の人は、『相手から自分への』思いがつよいからこそ、相手が夢をわたって来てくれた、と考えたほどだ。 「…全く知らない奴がでてくるっていうのは…どういうことなんだろうな…」 寝癖もそのままに、私はお湯を沸かしてコーヒーを入れる。 「…………」 コーヒーはミルクだけが好きだ。砂糖を入れると甘すぎて、ブラックだと寝起きの胃にはきつすぎる。それに私は猫舌だから牛乳を入れると温度がちょうど良いのだ。 ……こんな事を考えているうちに、少しずつ目が覚めてきた。 ここのところ、彼女の寝起きはいつも──夢のことを考えているせいなのだが──ぼーっとしている。学校に遅れるほどではないのだが。今日もまた、いつもと同じ、退屈な一日がはじまった。
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